飲み物についての一般的考察

1789.

み物には無数といってもよいほど多くの種類があるが、普通英国で飲まれるものは3種類に分類できるだろう。 一つは、発酵を伴わない最も単純な飲み物。 二つ目は、多量の炭酸を含んだ水よりなる飲み物。三つ目は、部分的に発酵させられた酒を含んだ飲物。 一番最初の分類はこのように呼ばれる。水、トーストを浸した湯、大麦水、砂糖水、砂糖牛乳、チーズ、ミルク乳漿、牛乳と水、レモネード、オレンジエード、シャーベット、リンゴ、西洋ナシジュース、ビネガーと水、ラズベリービネガーと水など。

1790.

炭酸ガスを含んでいる普通の分類は、ソーダ水、発砲ドラフト、ジンジャービールと私たちは名づけているかもしれない。

1791.

一部発酵したアルコールを含む飲み物は、スパイスワイン、ビショップ、エッグフリップ、エッグホット、ミルクエール、ミルクサック、パンチ、水割りスピリッツ。

1792.

しかし、私たちの間でもっとも一般的に飲まれ、「酔わないのに、快活になれる飲み物」を直ちに取り上げようと思う。

1793.

その飲み物は、紅茶と呼ばれるもので、今や生活に不可欠となっている。17世紀半ば以前では、それはイギリスでは飲まれておらず、古代ギリシャ人やローマ人は完全に知りもしなかった。 ピープスの日記には次のようにある。「1661年9月25日―私は1杯のお茶(中国の飲み物)を注文した。これは私が以前に一度も飲んだことのないものである。」 2年後、イギリス東インド会社は2ポンドしか購入していなかったためにそれはイギリスでは非常に希薄な商品だった。そのうちの2オンスは、贈り物として王室に送られた。1666年にはそれはロンドンで1ポンドにつき60シリングで売られた。 そのころから消費が5,000ポンドから50,000,000ポンドにまで膨れ上がった。



1800.

この国へコーヒーが紹介されたのは比較的最近のことである。ブルースによれば、コーヒーの木はアビシニアの固有種で、その国では太古の昔から栽培されてきたと言われている。

1818.

イギリスにコーヒーが最初に紹介されたのは、トルコ人商人のダニエル・エドワーズによってであったと思われる。彼の使用人であったギリシャ人のパスクアはそれをローストする方法を知っていた。この使用人は、エドワーズの後援の下で、ロンドンのジョージヤード、ロンバード通りで初のコーヒーハウスを設立した。そしてコーヒーは1ポンド4、5ギニーで販売され、税金がその後すぐ、飲み物にされる際に1ガロンに4ペンス課された。 しかしながら2世紀の間で、アビシニアの付近の未開地域をのぞいて食物として未知だったこの木の実は、文明世界でもあまねく知られるようになってきた。すべての階層のイスラム教徒は一日に2回コーヒーを飲む。それはフランスでは一般的な要求量であり、イギリス全体でもその要求は日増しに高まっていて、ローストと挽きと飲料化の機械装置が登場してからは特に関心が大きくなった。

1802.

あらゆるコーヒーの種類の中で、アラビアのものが最良であると考えられる。それは主にアデンとモカで栽培され、私たちのモカコーヒーの名前の語源ともなっている。モカコーヒーの豆は、他のものよりも小さくて丸っこく、そしてより香りがよく味もよい。評判と品質で次のものは、ジャバとセイロンのコーヒーで、その次はバーボンとマルチニーク、英領ギアナ地区のバービスのコーヒーである。ジャマイカとセントドミンゴのコーヒーはそれより評価が低い。

1803.

ローストの際、当てられる熱によって、コーヒーの構成物質には顕著な変化が表れる。豆の強靭さをなくさせて挽きやすくするローストの対象とは無関係に、タンニンおよび他の物質は水の中に部分的に溶けやすくなる。そしてコーヒーの煮汁の茶色はタンニンのその色である。 生の豆にはみられない香や風味も同様に焙煎によって高められ、またそれは適切な温度に熱が達するまではうまく仕上がるものではなく、さりとて熱の温度がこれを超えた場合、風味は再び失われ、炭と一緒に苦く渋い物質しか残らなくなる。

1804.

コーヒーのローストに最も必要な技術はすばらしい正確さで、コーヒーの品質はそれにかかっているといえる。ディーラー向けのコーヒーのローストはロンドンとパリで今や独立した種類の職業になった。そしてロースト業者のいくつかは、高い技能とともに巨大な規模で行っている。十分にローストされたコーヒーは20~30%を失い、粉末は空気に触れる面積が非常に大きくなるが、生のものだと1~2年はその風味を失わないだけだが、保存すことによって向上する。 もし1杯の最良のコーヒーが熱くされてテーブルの上に置かれるなら、その芳香で部屋は満たされるだろう。しかしコーヒーは、冷めたあとで再び温められると、ほとんどの風味は失われてしまうことがわかるはずだ。

1805.

完璧なコーヒーを作るには、使われる直前に豆をローストされ挽かれなければいけないが、即刻の使用に必要な量以上を一度に挽くべきではない。もっとたくさん挽かなければならないなら、それを空気から遮断するべきである。 コーヒーは容易に他の物質の芳香物を吸収してしまい、風味が悪くなる。黒砂糖がそのそばに置かれれば、不愉快な味が伝播してしまうだろう。西インドのコーヒーはしばしば砂糖やラム酒の蒸留のそばで作業されるため、痛んでいるといわれる。同様の効果が、ラム酒と砂糖をコーヒーと一緒に船で運んでくる場合にみられる。ムーズレイ博士いわく、インドからの船上の数袋のコショウが、全部のコーヒーの貨物をダメにしてしまっているという。

1806.

煮だしに使うコーヒーの量は、多くが飲む人の好みに左右されている。 イギリスのコーヒーで最も大きく、また最も多い間違いは、濃度があまりに薄すぎることである。ラムフォード伯爵は、夕食後に飲むおいしいコーヒーを作るには、1ポンドの良質なモカコーヒー(ローストされ挽かれるとたった13オンスになる)から、56杯作れ、1オンスの4分の1よりちょっと少ない量で中ぐらいのコーヒーカップ1杯分ができると述べている。





Top